発達障害の就労における現状

はじめに
今日は、発達障害者の雇用促進と職場定着についてお話しします。2024年4月から、全ての事業者に合理的配慮の提供が義務化されました。これは、障害者が不当な差別を受けず、平等に参加できる環境を整えるための重要なステップです。しかし、この義務化が実際にどれくらい知られているかというと、まだまだ低いのが現実です。

雇用状況と課題
2024年4月には法定雇用率が2.5%に引き上げられ、2027年には2.7%になる見込みです。しかし、東京都の調査(2022)によると、「合理的配慮」の認知度はたったの31.8%で、約70%の人がこの概念を知らないのです。さらに、障害者職業総合センター(2024)の調査では、身体障害者には配慮が行き届いているものの、精神障害者には十分な配慮が行われていないケースが多いと報告されています。

就労定着の課題
次に、発達障害者の就労定着について考えてみましょう。一般の新規学卒者の1年後の就労定着率は88.0%(厚生労働省, 2023)、労働者全体では85.0%です(厚生労働省, 2022)。一方、発達障害者の1年後の就労定着率は71.5%とかなり低いのです。早期退職者の主な理由は「労働条件の不適合」、中長期退職者は「障害や病気」が主な理由です。特に前者は適切な就労支援を受けていないリスクや、ジョブマッチングの不具合を示唆しています。また、後者は、合理的配慮や周囲からのサポートが不足しているために、長期的な不適応を引き起こし、二次障害を誘発している可能性があります。

二次障害の予防と支援の必要性
発達障害における二次障害(Clemow et al., 2017; Hollocks et al., 2019)には、以下のような問題があります:
 約2割に抑うつ症状がみられる
 約3~5割に不安症がみられる
発達障害者の就労支援には、適切なジョブマッチングや環境的な配慮だけでなく、二次障害の予防や失敗の捉え直しが重要です。失敗や挫折を繰り返し経験すると、「自分はだめだ」「何をやっても上手くいかない」という考え方の癖が無意識に形成され、自己肯定感や自信が失われます。その結果、二次障害(気分の落ち込みや不安症など)が維持されるリスクが高まります(Safren et al., 2004)。だからこそ、失敗を学びの機会と捉える支援が不可欠なのです。

まとめ
就労支援スタッフが、発達障害者の特性に合わせたサポートを提供することで、就労継続率の向上が期待できます。失敗を成功のチャンスと捉え、次につなげる支援体制を構築することが、発達障害者の社会参加を促進する鍵となるでしょう。このコラムを読んで、発達障害者の就労支援の重要性に気づいた方、ぜひ私たちのクリニックで一緒に取り組んでみませんか?私たちは、皆さんと一緒に発達障害者が安心して働ける環境づくりをサポートしたいと考えています。

ワークサポートデイケアは医療デイケアとなり、保険診療が適応されます。
医師診察が必要になるため、他医療機関通院中の方はご相談ください。

学校生活や就職活動で困ったときには、説明会は医療に繋がっていない方も参加できます。ぜひお気軽に相談にいらしてください。  (O)

2024年05月23日