第6章 受容的交流療法と自閉スペクトラム症―主体性を重視したアプローチ―
以下の文章は、倉光 修 監修・渡辺慶一郎 編著『自閉スペクトラム症のある青年・成人への精神療法的アプローチ』(金子書房,2021年)をスタッフが研修のために要約したものです。当院院長が第3章を担当している書籍です。出版社の許可を得てホームページ上に掲載しています。また、発達障害で困っている皆さんの参考になるよう、当院で行っていることなどを追記しています。ぜひ、ご一読ください。
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発達障害と言っても様々な種類があり、自閉スペクトラム症(以下:ASD)はそのうちのひとつです。ASDの性質がある幼児や学童には療育というアプローチがあります。療育では、衣類の着脱や食事摂取の自立、認知機能の発達、就学に向けた集団場面での適応を目指します。また、療育のカテゴリーには入りませんが、就学すると同時に教科学習も始まります。このように療育や教育によって、生活上の自立を促し知識を増やすことも重要ですが、こころを成長させるためのアプローチも忘れてはいけません。
ASDの性質をもつ人はその特徴によって基本的な信頼関係を構築できず、新しい人間関係を築く際にも過敏にならざるを得ませんが、こころが成長するためには人との関わりが不可欠であると言われています。こころの成長を促す方法として受容的交流療法を紹介します。受容的交流療法の名前を分解して詳しく説明すると、受容とはASDの性質をありのまま受け入れる姿勢のことを指し、交流とは人との関わりのことを意味しています。この療法に影響を与えた理論のひとつとして、当院でも行っているサイコドラマが挙げられています。サイコドラマとは、参加するメンバーが自分の人生や生活を即興的なドラマという形で自己表現することによって解放され、自己洞察を助ける集団精神療法です。サイコドラマでは、メンバーとの一体感を経験でき、自己を客観視し見つめなおすことができます。
当院ではサイコドラマをはじめとした相互的なやり取りによって生じる気持ちを大切に扱っています。こころを成長させ、ASD性質との新たな関わりを模索してみませんか。