第2章 障害学生支援室における自閉スペクトラム症のある大学生への支援

以下の文章は、倉光 修 監修・渡辺慶一郎 編著『自閉スペクトラム症のある青年・成人への精神療法的アプローチ』(金子書房,2021年)をスタッフが研修のために要約したものです。当院院長が第3章を担当している書籍です。出版社の許可を得てホームページ上に掲載しています。また、発達障害で困っている皆さんの参考になるよう、当院で行っていることなどを追記しています。ぜひ、ご一読ください。
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全大学、短期大学、専門学生約32万名を対象とした発達障害の疫学調査(日本学生支援機構,2017)によると、全体の0.16%に当たる人が「発達障害」と診断を受けています。正式な診断はされていないものの、配慮を行っている学生は全体の0.26%であり、全体を合わせて約8400名います。発達障害の診断書がある学生、及びその特性と関連性がある精神障害の学生を合わせると43.2%となり、年々増加しています。

某国立大学ではこのような困難を抱えている学生に向け、「コミュニケーション・サポートルーム」を開設し、職員が支援するにあたって過度の負担がかからないことを前提に、安心して学生生活を送れるよう支援をしています。サポートルームを利用経緯として、医療機関等からの紹介が多く、次いで本人自身が希望して来所されます。困り事の聴取、簡易心理検査等を実施した後、今後について話し合います。意思決定が苦手だったり、不安感が強く自己主張できない人が多く、それを周りの教職員に伝えることは難しいため、支援員が配慮を希望するか否か、そのメリットとデメリットを説明し、支援員から教職員に対してアプローチをかけます。発達特性を持つ学生の卒業率は全体の3分の2と低く、また就職率は59%と半数は就職難に陥っています。そのような学生を減らすために、サポートルームでは①自分の特性を理解し、必要なスキルを身につけること、②自分の適性に合った環境を選択、調整すること、③支援を周りの人に求めることが出来ることに焦点を当て、学生の利益となるような支援を行っています。


当院の就労支援デイケアにおいても、上記と同様に様々なプログラムを体験することで自分についてよく知り、就活、就職後もよりよく働いていくためのスキルを身に着けていきます。

2022年07月08日